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2026.08.22

広電27%増収、マツダ過去最高売上——それでも広島の中小企業が苦しくなる構造的理由と、今やるべき3つのこと

大企業が好調な時こそ、中小企業は苦しくなる

広島電鉄、2026年4〜6月期の売上高が前年同期比27.1%増の約101億円。マツダ、第1四半期の売上高が過去最高で最終損益は約300億円の黒字転換。

このニュースを見て「広島の景気がいい」と思った人は多いだろう。だが、ちょっと待ってほしい。

大企業が好調な時、中小企業はむしろ苦しくなる。

これは感情論ではなく、構造の話だ。

大企業が儲かれば賃金を上げる。賃金を上げれば人が集まる。人が集まるということは、中小企業から人が抜けるということだ。広島県の最低賃金は56円引き上げられて1141円。大企業はこれを軽く超える水準で採用をかけてくる。中小企業は「最低賃金を上回るだけ」では戦えない。

しかも、広島県の有効求人倍率は1.33倍で2カ月連続の低下。一見すると「求人が減っている」ように見えるが、実態はもう少し複雑だ。大企業が好条件で人を囲い込み、中小企業が出す求人には応募が来ない——つまり「求人はあるのに人が来ない」状態が加速している可能性がある。

広島の中小企業経営者にとって、今この瞬間が最も危険なタイミングかもしれない。

広電とマツダ、好調の中身を分解する

まず、何が起きているのかを正確に見よう。

広島電鉄の増収の主因は、駅前大橋ルートの開業だ。新ルートによって広島駅と中心部のアクセスが改善し、利用者が増えた。インフラ投資が収益に直結した好例であり、これは一過性のブームではなく構造的な変化だ。広島駅周辺の再開発と合わせて、人の流れが変わっている。

マツダは新型CX-5の販売好調と円安効果が重なった。売上高は過去最高、最終損益は約300億円の黒字。ただし、円安による押し上げ効果がどこまで持続するかは不透明だ。為替が1円動くだけで年間の営業利益が数十億円単位で変動するのがマツダの体質。好調の中身は「実力半分、追い風半分」と見ておくのが冷静な見方だろう。

いずれにせよ、この2社の好調は広島経済にとって明るいニュースだ。下請け・取引先への発注増、社員の消費増、地域への税収増——波及効果は確実にある。

問題は、その波及効果が中小企業に届く前に、人材コストの上昇圧力だけが先に届くことだ。

「賃上げで対抗」は中小企業の戦い方ではない

ここで多くの記事が「中小企業も賃上げを」「職場環境の改善を」と書く。間違ってはいない。だが、正直に言おう。

年商1億〜5億円の中小企業が、マツダや広電と賃金で張り合うのは無理だ。

マツダの平均年収は約680万円。広電も公共交通という安定性がある。中小企業が同じ土俵で戦えば、利益を食い潰して終わる。

では、どうするか。

答えは「人に頼る部分を減らす」か「人でしかできない部分の価値を上げる」か、その両方だ。

中小企業が今やるべき3つのこと

1. AIと自動化で「人がいなくても回る仕組み」をつくる

これは「流行りのAIを入れましょう」という話ではない。「月給25万円の事務員が8時間かけてやっている作業を、月5万円のツールで2時間に圧縮する」という話だ。

具体例を挙げる。

これらは大企業向けの大規模システムではない。社員5人〜50人の会社でも、今日から始められるものばかりだ。

ポイントは「人を減らす」のではなく「人がやらなくていい仕事を減らす」こと。浮いた時間を、顧客対応や営業、商品開発に回す。これが中小企業の生存戦略の第一歩だ。

2. 「大企業にできないこと」で人材を引きつける

賃金で勝てないなら、何で勝つか。

中小企業の最大の武器は意思決定の速さと、一人ひとりの裁量の大きさだ。マツダで入社3年目の社員が「新規事業をやりたい」と言っても、実現までに何年かかるかわからない。だが、社員20人の会社なら、社長に直接提案して来月から動ける。

これを「うちは自由な社風です」と曖昧に語っても響かない。具体的に示す必要がある。

こういう実例と数字で語れる会社は、大企業に行けるスペックの人材でも「面白そうだ」と振り向く。特に20代後半〜30代前半の「大企業を経験して、次に裁量を求める層」は、広島にも確実にいる。

3. 大企業の好調を「取引先として」取りに行く

広電が増収、マツダが過去最高。ということは、この2社とその周辺には金が流れている。

この波に乗れるかどうかは、中小企業の動き方次第だ。

広電の駅前大橋ルート開業で広島駅周辺の人流が変わった。飲食、小売、サービス業にとっては新しい商圏が生まれている。マツダの生産増は、部品加工、物流、清掃、人材派遣など周辺サービスの需要増に直結する。

「うちには関係ない」と思っている経営者が多いが、本当にそうか?

例えば、マツダの工場周辺で弁当を配達している会社が、生産増に合わせて配食数を20%増やせたら? 広電の新ルート沿線で、訪日観光客向けの多言語対応サービスを始めたら?

大企業の好調は、中小企業にとって「脅威」であると同時に「商機」でもある。 問題は、それを商機として捉える視点と、素早く動ける体制があるかどうかだ。

最低賃金1141円時代のリアル

最低賃金56円アップの影響を、もう少し具体的に見ておこう。

パート・アルバイトを10人雇っている飲食店を想定する。全員が1日6時間、月22日勤務だとすると、56円×6時間×22日×10人=月額約7.4万円のコスト増。年間で約89万円。

売上が同じなら、この89万円は純粋に利益を圧迫する。時給1141円でも人が来なければ、さらに上げるしかない。1200円にすれば、元の1085円からの差額は115円。年間のコスト増は約182万円になる。

社員10人規模の会社にとって、年間180万円は小さな数字ではない。これを吸収するには、売上を増やすか、コストを下げるか、生産性を上げるしかない。

「賃上げは必要だが、賃上げだけでは持たない」——これが中小企業の本音だろう。だからこそ、前述の「仕組みで回す」「価値で勝負する」「商機を取りに行く」の3つを同時に進める必要がある。

「広島の景気がいい」の裏側を見る

広電が好調、マツダが好調。広島駅前は再開発で変わりつつある。G7サミット以降、広島の知名度は上がり、観光客も増えている。

表面だけ見れば、広島経済は明るい。

だが、その明るさの恩恵が届いているのは、大企業とその直接の取引先、そして広島市中心部に偏っている可能性がある。呉、三原、尾道、福山——瀬戸内エリアの中小企業が同じ恩恵を受けているかと言えば、疑問だ。

むしろ、大企業の賃上げに引っ張られて人件費だけが上がり、売上は横ばい——という「スタグフレーション的な状況」に陥っている中小企業は少なくないはずだ。

大企業の好決算は、中小企業にとって「おめでとう」ではなく「警報」だ。

好調な今だからこそ、仕組みを変える投資ができる。景気が悪くなってからでは遅い。AIツールの導入も、採用戦略の見直しも、新しい取引先の開拓も、余力があるうちにやるべきだ。

結局、どうすればいいのか

まとめる。

  1. 人に頼りすぎない仕組みをつくる。 AIや自動化ツールで、月数万円のコストで業務を圧縮できる時代だ。まず1つ、今月中に試してみてほしい。
  2. 賃金ではなく「裁量」と「スピード」で勝負する。 大企業にできない働き方、任せ方を、具体的な実例で発信する。
  3. 大企業の好調を商機に変える。 広電の新ルート、マツダの生産増——その周辺で自社が取れる仕事がないか、今週中に洗い出す。

広島の大企業が好調なのは、広島にとって良いことだ。だが、その波に乗るか、波に飲まれるかは、中小企業の経営者の判断と行動にかかっている。

考えている暇があったら、まず動こう。